Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『ムスカリの咲く道で』 http://nspc.kojyuro.com/0130.html
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![]() 誕生花 ムスカリ 花言葉 「明るい未来」、「通じ合う心」 1月30日の誕生花はムスカリです。ムスカリはキジカクシ科の植物で、冬の終わり〜初夏かけて開花します。草丈は15cmほどで、ぶどうのような花を咲かせる春の球根植物です。ムスカリは耐寒性が強く、球根は植えっぱなしでも育つため、毎年花が咲きます。小さな花が花壇に群生する姿は圧巻です。 |
『ムスカリの咲く道で』春のはじまり、まだ風に冷たさが残る三月の午後。大学の裏庭に続く小道には、今年もムスカリが咲き始めていた。青紫の小さな花が、地面に寄り添うように並び、まるで静かな希望が道を照らしているようだった。 文学部の四年生・紗良(さら)は、卒業を目前に控えたある日、その小道を歩いていた。 ムスカリの花を見ると、決まって思い出す人がいた。 二年前の春、同じゼミにいた青年・悠人(ゆうと)。 彼は物静かで、いつも本を読んでいた。紗良もまた、人と話すのが少し苦手で、ゼミの帰り道に偶然一緒になったときも、最初は言葉がなかなか出なかった。 けれど、ムスカリの咲く道で、彼がふとつぶやいた言葉がきっかけだった。 「この花、ムスカリって言うんだ。花言葉は“失望”と“明るい未来”。…なんだか、矛盾してるけど、好きなんだ」 「…どうして?」 「失望があるからこそ、未来が輝くって思えるから」 その言葉に、紗良は心を動かされた。 それから、二人はムスカリの道を歩くたびに、少しずつ言葉を交わすようになった。好きな本の話、将来の夢、静かな時間。春の風の中で、心が少しずつ開いていった。 けれど、悠人は卒業後、遠くの出版社に就職し、東京を離れた。 「また、ムスカリが咲く頃に会えたらいいね」 そう言って、彼は去っていった。 それから二年。紗良は大学で学びながら、ムスカリの花を育て続けた。裏庭の小道に、毎年球根を植え、春になるとその花が咲くのを待った。 そして今年の春。ムスカリが見事に咲いた日、紗良はその道を歩いていた。 「…今年も、咲いたね」 すると、前方から誰かが歩いてきた。 「紗良?」 振り返ると、そこには懐かしい顔があった。 「…悠人さん?」 少し大人びた表情で、でも変わらぬ優しい目をした彼が、そこに立っていた。 「卒業、おめでとう。…どうしても、伝えたくて」 紗良は驚きと嬉しさで、言葉が出なかった。 「この道、覚えてる?…君と話した場所」 「もちろん。…毎年、ムスカリを植えてたんです。あなたに会える気がして」 悠人は、ポケットから小さな花束を取り出した。 「これ、ムスカリ。…君に贈りたくて育てたんだ」 紗良は、胸がいっぱいになった。 「ありがとう。…すごく嬉しいです」 悠人は、少し照れながら言った。 「これからは、失望じゃなくて、明るい未来を一緒に歩きたい。…紗良と」 紗良はうなずいた。 「はい。…ムスカリのように、静かに、でも確かに」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。季節の花を眺めながら、未来の話をし、互いの夢を語り合った。 そして一年後の春。ムスカリの道には、今年も青紫の花が静かに咲いていた。 「紗良、今年も咲いたね」 「うん。…あなたと一緒に育てたから」 悠人は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この花のように、君と未来を咲かせたい。…結婚してください」 紗良は、涙をこらえながら笑った。 「はい。…あなたの言葉が、私の春になる」 ムスカリの花が、春の光の中で静かに揺れ、二人の未来をやさしく祝福していた。 |
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1月30日の誕生花はムスカリです。ムスカリはキジカクシ科の植物で、冬の終わり〜初夏かけて開花します。草丈は15cmほどで、ぶどうのような花を咲かせる春の球根植物です。ムスカリは耐寒性が強く、球根は植えっぱなしでも育つため、毎年花が咲きます。小さな花が花壇に群生する姿は圧巻です。