Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 「幸福の黄色い花」 http://nspc.kojyuro.com/0106.html
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
![]() 誕生花 マンサク 花言葉 「神秘」、「ひらめき」 1月6日の誕生花はマンサクです。マンサクはマンサク科の植物です。まだ冬の名残のある野山で、いち早く花を咲かせます。黄色くヒラヒラとした見た目でポンポンのようにかわいらしい花が特徴で、花がよく咲けば豊作、花が少なければ不作など、その年の稲の生育を占う植物として、古くから人々と深いつながりを持っていました。ベニバナマンサクはとくに花色の美しい品種です。 ![]() |
「幸福の黄色い花」春が待ち遠しい冷たい朝。 菜央は幼少期から春先のこの花が好きだった。 学生時代、菜央は写真部に所属していた。 春の写真展に向けて、市内の名所を歩き回ったあの日、 晴斗は、菜央の繰り返し撮った何枚ものマンサク写真を眺めて微笑んだ。 その言葉が、彼女の胸に小さな輝きとなって残った。 卒業と同時に、二人はそれぞれの道へ進む。 数年が過ぎた。 「やっぱり、この花が一番ほっとするな……」 ふいに背後から懐かしい声が響いた。 「まだ“地味な花”撮ってるの?」 振り返ると、晴斗が立っていた。少し大人びた顔で。 「春を探しに帰ってきたんだ」 晴斗は仕事を辞めて地元に戻ってきたのだった。 菜央は一緒にマンサクを撮影しながら、心の奥にしまっていた気持ちを少しずつ言葉にしていった。 「高校のとき、“新しい春”を探すって言ってたけど、実は都会は息苦しかったの」 「地元の春は、やっぱりあたたかいね」 マンサクの花びらに光が差す。 晴斗はカメラを下ろし、菜央へ向き直る。 「地元も、この花も、そして菜央と過ごした写真部の春も――全部、もう一度取り戻したいって思った」 菜央の胸には、マンサクの花のように淡く優しい希望が灯る。 その春、二人は写真サークルのOB展で丘の写真を出展した。 「やっぱり、春はこの花から始まるんだね」 帰り道、菜央は思いきって晴斗に声をかける。 「これからは、ずっと一緒にマンサクを見たい」 晴斗は頷き、優しく菜央の肩を抱いた。 「新しい春、毎年二人で探しに行こう」 菜央の心は、幸福の黄色い花に包まれるようだった。 数年後、二人は小さな写真スタジオを丘の近くに開いた。 春が来るたび、二人は「まず咲く」黄色い花の前で手をつないだ。 「新しい春は、きっとまたここから始まる」 丘に咲くマンサクは、二人の未来を静かに見守っている。 |
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50