Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『キンカンの庭で』 http://nspc.kojyuro.com/0129.html
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![]() 誕生花 キンカン 花言葉 「思い出」、「感謝」 1月29日の誕生花はキンカンです。ミカン科の果樹です。ミカンの木に似ていますが、葉はミカンの葉よりも小さく、7月から9月頃に良い香りのする小さな白い花が咲きます。金冠のみはミカンのようにオレンジ色で、うずらの卵ほどの大きさです。観賞用と食用に分けられますが、食用のキンカンは実だけではなく皮まで食べることができます。 ![]() |
『キンカンの庭で』冬の午後、風が冷たく吹き抜ける中、古民家の庭にあるキンカンの木には、今年も黄金色の実がたわわに実っていた。小ぶりながらも艶やかに輝くその果実は、寒さの中にあっても、どこかあたたかさを感じさせる。 庭師として働く柚希(ゆずき)は、その木の前で剪定作業をしていた。キンカンの実は、年末になると近所の人々に配られ、風邪予防や甘露煮に使われる。彼女にとっても、この木は特別な存在だった。 それは高校時代、園芸部で一緒だった同級生・蒼(そう)が、初めて彼女にキンカンの実を手渡してくれた日の記憶から始まる。 「これ、庭で採れたキンカン。…甘酸っぱくて、元気出るよ」 その言葉と、彼の少し照れた笑顔が、今も忘れられない。 卒業後、蒼は造園の専門学校へ進み、柚希は地元の庭園管理会社に就職した。連絡は続いていたが、仕事の忙しさや距離のせいで、次第に疎遠になっていった。 それでも、毎年キンカンが実る頃になると、彼のことを思い出す。 「…今年も、きれいに実ったね」 そうつぶやいたその時、庭の門が開く音がした。 「柚希?」 振り返ると、そこには懐かしい顔があった。 「…蒼くん?」 少し日焼けした顔に、変わらぬ優しい目をした彼が立っていた。 「久しぶり。…この庭、まだ覚えてる?」 柚希は驚きと嬉しさで、言葉が出なかった。 「もちろん。…キンカンの木、ずっと見守ってたよ」 蒼は、ポケットから小さな瓶を取り出した。 「これ、僕が作ったキンカンのジャム。…君に食べてもらいたくて」 柚希は、胸がいっぱいになった。 「ありがとう。…すごく嬉しい」 蒼は、少し照れながら言った。 「これからは、庭も、季節も、君と一緒に育てていきたい」 柚希はうなずいた。 「はい。…キンカンのように、優しく、元気に」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。庭の手入れをしながら、季節の移ろいを感じ、未来の話を語り合った。 そして一年後の冬。キンカンの木には、今年も黄金色の実がたわわに実っていた。 「柚希、今年もきれいに実ったね」 「うん。…あなたと一緒に育てたから」 蒼は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この庭で出会えてよかった。…これからも、ずっと一緒に育てていきたい。結婚してください」 柚希は、涙をこらえながら笑った。 「はい。…あなたの優しさが、私の実を結ばせてくれる」 キンカンの実が、冬の光の中で静かに揺れ、二人の未来をやさしく照らしていた。 |
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1月29日の誕生花はキンカンです。ミカン科の果樹です。ミカンの木に似ていますが、葉はミカンの葉よりも小さく、7月から9月頃に良い香りのする小さな白い花が咲きます。金冠のみはミカンのようにオレンジ色で、うずらの卵ほどの大きさです。観賞用と食用に分けられますが、食用のキンカンは実だけではなく皮まで食べることができます。