Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『スイセンの咲く頃に』 http://nspc.kojyuro.com/0113.html
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![]() 誕生花 スイセン 花言葉 「自己愛」、「神秘」 1月13日の誕生花はスイセンです。スイセンはヒガンバナ科の植物で、早春から花を咲かせることから春を告げる花として親しまれています。まっすぐすらっと伸びる茎が特徴で、ラッパ状の花を咲かせる球根植物です。 ![]() |
『スイセンの咲く頃に』冬の終わり、まだ空気に冷たさが残る頃。郊外の公園の片隅に、ひっそりとスイセンの花が咲いていた。白く清らかな花びらに、黄色の冠が揺れるその姿は、寒さの中に差し込む希望のようだった。 大学三年の結衣(ゆい)は、卒業を控えた春休みにその公園を訪れた。就職活動に追われ、心が少し疲れていた彼女は、静かな場所を求めて歩いていた。 ベンチに腰掛けてスイセンを眺めていると、隣に誰かが座った。 「この花、好きなんですか?」 声をかけてきたのは、同じ大学の理工学部に通う悠真(ゆうま)だった。彼とは講義で何度か顔を合わせたことがある程度だったが、なぜか自然に会話が始まった。 「…好きっていうか、見てると落ち着くんです。寒いのに、ちゃんと咲いてて」 「スイセンって、冬の終わりに咲くから“希望”って花言葉もあるんですよ。…僕、植物の研究してるんです」 結衣は驚いた。 「そうなんですか?じゃあ、このスイセンも、研究対象?」 「ううん、これはただの散歩コース。…でも、毎年ここで咲くのを見てると、春が来るんだなって思える」 それから、二人は公園で会うようになった。スイセンの花が咲いている間だけの、静かな時間。結衣は、悠真の穏やかな話し方と、植物に向けるまっすぐな眼差しに惹かれていった。 ある日、結衣はぽつりとつぶやいた。 「就職、決まったんです。東京の広告会社。…でも、なんだか不安で」 悠真は少し黙ってから言った。 「僕は、大学院に進む予定です。植物の研究を続けたくて。…でも、結衣さんが東京に行くって聞いて、ちょっと寂しいです」 その言葉に、結衣の胸がざわついた。 「…私も、悠真くんと話す時間が好きでした。スイセンの花みたいに、静かだけど、確かに心に残る感じ」 悠真は、スイセンの花を見つめながら言った。 「来年も、ここでスイセンが咲いたら…また会えますか?」 結衣はうなずいた。 「うん。絶対、来る」 卒業式の日。結衣は公園のベンチにスイセンの花束を置いた。 「また、来年」 それから一年。東京での仕事は忙しく、慣れない環境に戸惑う日々だったが、結衣はスイセンの花束を部屋に飾りながら、あの公園を思い出していた。 そして春。結衣は約束通り、公園を訪れた。 スイセンは、今年も変わらず咲いていた。 ベンチに座っていると、後ろから声がした。 「…来てくれたんですね」 振り返ると、悠真が立っていた。少し大人びた表情で、でも変わらぬ優しい目をしていた。 「約束、守りました。…結衣さんも、守ってくれて嬉しいです」 二人は、スイセンの花を挟んで見つめ合った。 「これからも、毎年じゃなくてもいい。…でも、できれば、もっと近くで春を迎えたい」 悠真の言葉に、結衣は笑顔でうなずいた。 「私も、そう思ってた。スイセンの花みたいに、静かに、でも確かに咲く気持ちを、大切にしたい」 その日から、二人は少しずつ距離を縮めていった。遠距離でも、季節の花を通して心をつなぎながら、やがて同じ街で暮らすようになった。 そして数年後の春。公園のスイセンは、今年も変わらず咲いていた。 「結衣さん、今年もこの花をください」 「はい。…花言葉は?」 悠真は微笑んだ。 「“尊敬”と“希望”。…そして、“変わらぬ愛”」 結衣は、スイセンの花束を手渡しながら言った。 「じゃあ、今年はそれで。…ずっと、咲かせていこうね」 スイセンの香りが、二人の未来を静かに祝福していた。 |
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1月13日の誕生花はスイセンです。スイセンはヒガンバナ科の植物で、早春から花を咲かせることから春を告げる花として親しまれています。まっすぐすらっと伸びる茎が特徴で、ラッパ状の花を咲かせる球根植物です。