Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『フリージアの約束』 http://nspc.kojyuro.com/0110.html
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
![]() 誕生花 フリージア 花言葉 「天真爛漫」、「優雅」 1月10日の誕生花はフリージアです。フリージアはアヤメ科の植物で、暖かい春の日がさし始める3月〜4月に開花します。黄色、白色、桃色、紫など、たくさんの花色があり、お庭を彩ってくれます。空に向いて大きく花が開くことが特徴です。 |
『フリージアの約束』春の風が街をやさしく撫でる頃、駅前の小さな花屋「花音(かのん)」には、黄色や白、ピンクのフリージアが並び始めていた。甘く爽やかな香りが通りを包み、通りすがりの人々の足を止める。 花屋で働く千紘(ちひろ)は、フリージアの季節になると、決まってある記憶がよみがえる。 大学時代、卒業式の前日に出会った青年・悠真(ゆうま)のことだった。 彼は花屋にふらりと現れ、「フリージアって、卒業に合う花ですか?」と尋ねた。 「ええ。花言葉は“希望”や“無邪気”です。新しい旅立ちにぴったりですよ」 そう答えた千紘に、悠真は少し照れたように笑った。 「じゃあ、友達に贈ります。…本当は、好きな人なんですけどね」 その言葉に、千紘の胸が少しだけざわついた。 それから数日後、悠真は再び花屋に現れた。 「渡せませんでした。…卒業式、すれ違ってしまって」 彼は、手にしたフリージアの花束を見つめながら言った。 「でも、来年もこの花を買いに来ます。今度こそ、ちゃんと渡したいから」 千紘はその言葉を信じて、翌年の春を待った。 けれど、悠真は現れなかった。 それから三年。千紘は花屋で働き続けながら、毎年フリージアを並べた。香りが漂うたびに、あの日の会話がよみがえった。 そして四年目の春。花屋の前で、フリージアの香りに足を止める一人の男性がいた。 「…千紘さん?」 振り返ると、そこには少し大人びた悠真が立っていた。 「覚えてますか?…あの時、フリージアを買った悠真です」 千紘は驚きながらも、笑顔でうなずいた。 「もちろん。…ずっと待ってました」 悠真は、少し照れたように笑った。 「実は、あの時好きだった人とは、結局何も始まらなかったんです。でも、あの花屋で話した時間が、ずっと心に残ってて…」 彼はポケットから、小さなメモを取り出した。 「これ、あの時の花束に添えるつもりだった手紙です。…読んでもらえますか?」 千紘は、そっと手紙を受け取った。
千紘は、胸がいっぱいになった。 「…今なら、受け取れます。フリージアも、手紙も」 悠真は、花束を手に取り、千紘に差し出した。 「じゃあ、今年の春は…一緒に歩いてくれますか?」 千紘は、笑顔でうなずいた。 「はい。フリージアの香りに導かれて、ずっと待ってましたから」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。花屋の閉店後に散歩をしたり、季節の花を一緒に選んだり。千紘の世界に、悠真の優しさが自然に溶け込んでいった。 そして一年後の春。花屋には、今年もフリージアが並んでいた。 「千紘さん、今年もフリージアをください」 「もちろん。…花言葉は?」 悠真は微笑んだ。 「“希望”と“永遠の愛”って意味もあるらしいですよ」 千紘は笑って、フリージアの花束を手渡した。 「じゃあ、今年はそれで」 フリージアの香りが、二人の未来をそっと祝福していた。 |
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
1月10日の誕生花はフリージアです。フリージアはアヤメ科の植物で、暖かい春の日がさし始める3月〜4月に開花します。黄色、白色、桃色、紫など、たくさんの花色があり、お庭を彩ってくれます。空に向いて大きく花が開くことが特徴です。