Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『アマリリスの咲く窓辺で』 http://nspc.kojyuro.com/0126.html
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![]() 誕生花 アマリリス 花言葉 「内気」、「誇り」 1月26日の誕生花はアマリリスです。アマリリスはヒガンバナ科の植物です。原産地は熱帯アメリカで、約80種類の原種があります。5月の半ばから、日差しが強まる初夏になると、アマリリスの緑色の蕾が顔を覗かせます。ユリのように大きく美しい花を咲かせることが特徴です。 ![]() |
『アマリリスの咲く窓辺で』梅雨の晴れ間、大学の温室に差し込む光が、赤く大きな花を照らしていた。アマリリス。堂々とした姿で咲くその花は、まるで誰かの秘めた想いが形になったようだった。 園芸学部の三年生・美羽(みう)は、その花の前で立ち止まった。 「…今年も、きれいに咲いたね」 彼女が育てていたアマリリスは、ゼミの研究対象でもあり、個人的な思い入れも深かった。なぜなら、この花を通して、ある人と出会ったから。 それは一年前の春。温室に迷い込んできた文学部の学生・蒼真(そうま)だった。 「この花、すごく目立ちますね。…名前、なんて言うんですか?」 「アマリリス。花言葉は“誇り”とか“輝く美しさ”」 「…美羽さんにぴったりですね」 その言葉に、美羽は思わず顔を赤らめた。彼は詩を書いていて、植物の姿から言葉を紡ぐのが得意だった。 それから、蒼真は温室に通うようになった。美羽は植物の話を、蒼真は詩の話を。互いに違う世界にいたけれど、アマリリスの前では自然に言葉が交わった。 ある日、蒼真が言った。 「僕、卒業したら出版社に就職する予定なんです。…東京に行きます」 美羽は、胸がざわついた。 「そっか…遠くなるね」 「でも、アマリリスが咲く頃には、また会いに来ます。…約束です」 それから一年。蒼真は東京へ行き、美羽は温室で植物を育て続けた。連絡は時々来たけれど、忙しさの中で次第に途切れていった。 それでも、美羽はアマリリスを育て続けた。彼との約束を信じて。 そして今年の梅雨。アマリリスが見事に咲いた日、温室に一人の男性が現れた。 「…今年も、きれいに咲いたね」 振り返ると、そこには蒼真が立っていた。 「蒼真くん…!」 「約束、守りに来ました。…君の花に、会いたくて」 美羽は、胸がいっぱいになった。 「私も、ずっと待ってた。…この花と一緒に」 蒼真は、ポケットから小さな冊子を取り出した。 「これ、僕の詩集。…表紙は、君のアマリリスの写真」 美羽は、ページをめくりながら涙をこらえた。 「…すごく、嬉しい。ありがとう」 蒼真は、そっと美羽の手を握った。 「これからは、花と詩を一緒に育てていきたい。…君と」 美羽はうなずいた。 「はい。…アマリリスのように、誇りを持って」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。温室で植物を育てながら、詩を紡ぎ、未来を語り合った。 そして一年後の梅雨。アマリリスは、今年も堂々と咲いていた。 「美羽、今年も咲いたね」 「うん。…あなたと一緒に育てたから」 蒼真は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この花のように、君と未来を咲かせたい。…結婚してください」 美羽は、涙をこらえながら笑った。 「はい。…あなたの言葉が、私の花になる」 アマリリスの花が、梅雨の光の中で鮮やかに揺れ、二人の未来をやさしく照らしていた。 |
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1月26日の誕生花はアマリリスです。アマリリスはヒガンバナ科の植物です。原産地は熱帯アメリカで、約80種類の原種があります。5月の半ばから、日差しが強まる初夏になると、アマリリスの緑色の蕾が顔を覗かせます。ユリのように大きく美しい花を咲かせることが特徴です。