Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『ユキヤナギの小径で』 http://nspc.kojyuro.com/0119.html
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![]() 誕生花 ユキヤナギ 花言葉 「愛嬌」、「愛らしさ」 1月19日の誕生花はユキヤナギです。ユキヤナギはバラ科の低木です。枝垂れた枝先に長い穂をつけることが特徴で、たくさんの花をつけることからひときわ目を引きます。公園や花壇によく植えられている植物です。 |
『ユキヤナギの小径で』春のはじまり、まだ肌寒い風が吹く中、川沿いの遊歩道にユキヤナギが咲き始めた。細い枝にびっしりと咲いた白い小花が、まるで雪のようにふわりと揺れている。 大学三年の遥(はるか)は、毎朝その道を通って通学していた。ユキヤナギの咲く季節になると、決まって思い出す人がいた。 高校時代の同級生、湊(みなと)。 彼とは三年間同じクラスで、特別仲が良かったわけではないけれど、なぜか気になる存在だった。卒業式の日、彼がふと口にした言葉が、今も忘れられない。 「春になったら、ユキヤナギの道で会えたらいいな」 それは告白でも約束でもなかった。ただの独り言のような一言。でも、遥の心には深く残っていた。 大学に進学してからも、毎年ユキヤナギが咲くたびに、その道を歩いた。けれど、湊の姿を見かけることはなかった。 今年もまた、ユキヤナギが咲き始めた。遥は、白い花の小径を歩きながら、ふと立ち止まった。 「…今年も、いないか」 そうつぶやいた瞬間、後ろから声がした。 「…遥?」 振り返ると、そこには懐かしい顔があった。 「湊…くん?」 少し背が伸びて、でも変わらない優しい目をした彼が、そこに立っていた。 「やっぱり、ここに来てたんだね」 遥は驚きと嬉しさで、言葉が出なかった。 「ずっと、来てたんだ。毎年。でも、会えなかった」 湊は、少し照れたように笑った。 「僕も、何度か来たよ。でも、時間が合わなかったのかも。…今年は、やっと会えた」 遥は、胸がいっぱいになった。 「…あの時の言葉、覚えてたんだね」 「うん。あれ、実は…告白のつもりだったんだ。言葉にできなかったけど」 遥は、ユキヤナギの花を見つめながら言った。 「私も、毎年ここに来てた。…あなたに会いたくて」 湊は、そっと遥の手を取った。 「じゃあ、今年からは一緒に歩こう。ユキヤナギの道を、毎年」 遥はうなずいた。 「うん。…ずっと、隣で」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。春の小径を歩きながら、季節の移ろいや日々のことを語り合い、静かな思いを重ねていった。 そして一年後の春。ユキヤナギの小径には、今年も白い花が風に揺れていた。 「遥、今年も咲いたね」 「うん。…変わらず、きれい」 湊は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この道で出会えてよかった。…これからも、ずっと一緒に歩いていきたい」 遥は、涙をこらえながら笑った。 「私も。…あなたとなら、どんな季節も大丈夫」 ユキヤナギの花が、春の光の中でふわりと揺れ、二人の未来をやさしく包んでいた。 |
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1月19日の誕生花はユキヤナギです。ユキヤナギはバラ科の低木です。枝垂れた枝先に長い穂をつけることが特徴で、たくさんの花をつけることからひときわ目を引きます。公園や花壇によく植えられている植物です。