Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『おもとの約束』 http://nspc.kojyuro.com/0124.html
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誕生花 オモト 花言葉 「長寿」 1月24日の誕生花はオモトです。オモトはユリ科の多年草で、日本が原産の植物です。宮城県を北限に、本州、四国、九州にも自生しています。江戸時代から品種改良が繰り返され、多彩な形や模様は「葉芸」と呼ばれています。花期は4月〜6月で、古くから日本で鑑賞されている伝統的な植物です。 ![]() |
『おもとの約束』梅雨の晴れ間、古民家を改装したギャラリー「青葉庵」の庭には、艶やかな葉を広げる万年青(おもと)が静かに佇んでいた。濃緑の葉の間から、控えめに顔を出す白い花が、雨上がりの光を受けてそっと輝いている。 このおもとの花は、ギャラリーの管理を任されている菜月(なつき)が、祖母から譲り受けた鉢植えだった。 「おもとの花はね、目立たないけれど、誠実で長く咲くの。…大切な人との縁を守ってくれるよ」 そう言って微笑んだ祖母の言葉が、今も菜月の心に残っている。 大学卒業後、菜月はこの古民家ギャラリーの運営を手伝うようになった。静かな空間で、季節の展示を企画し、訪れる人々と言葉を交わす日々。そんなある初夏の日、彼女の前に一人の青年が現れた。 「…ここ、昔来たことがある気がして」 彼の名は悠真(ゆうま)。陶芸家として活動しており、展示会の打ち合わせで訪れたのだった。 「もしかして、小学生の頃に来たことありますか?…このおもと、ずっとここにあるんです」 悠真は驚いたように目を見開いた。 「…覚えてる。祖母に連れられて来たんだ。あの時、玄関にあったこの葉っぱが妙に印象的で」 それから、二人は展示の準備を通して少しずつ距離を縮めていった。菜月は空間を整え、悠真は器を並べる。静かな会話の中に、どこか懐かしさが漂っていた。 ある日、悠真がぽつりとつぶやいた。 「僕、ずっと一人で作ってきたけど…この場所に来て、誰かと作品を並べるっていいなって思った」 菜月は、おもとの花を見つめながら言った。 「この花、控えめだけど、毎年ちゃんと咲くんです。…私も、ここで誰かを待ってたのかもしれません」 展示会が終わる頃、悠真は言った。 「また、来てもいいですか?…季節が変わっても、君がここにいるなら」 菜月はうなずいた。 「もちろん。…おもとの花と一緒に、待ってます」 それから一年。悠真は季節ごとにギャラリーを訪れ、器を並べ、菜月と語らった。春には桜の器、夏には青磁、秋には紅葉を描いた皿。そして梅雨、再びおもとの花が咲いた頃、彼はギャラリーに現れた。 「菜月、今年も咲いたね」 「うん。…あなたが来てくれるから、きっとこの子も嬉しいんだと思う」 悠真は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この場所で出会えてよかった。…これからも、ずっと一緒に作品を並べていきたい。結婚してください」 菜月は、涙をこらえながら笑った。 「はい。…あなたの器が、私の空間を満たしてくれる」 おもとの花が、雨上がりの光の中で静かに揺れ、二人の未来をやさしく祝福していた。 |
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1月24日の誕生花はオモトです。オモトはユリ科の多年草で、日本が原産の植物です。宮城県を北限に、本州、四国、九州にも自生しています。江戸時代から品種改良が繰り返され、多彩な形や模様は「葉芸」と呼ばれています。花期は4月〜6月で、古くから日本で鑑賞されている伝統的な植物です。