Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成「椿の咲く約束」 http://nspc.kojyuro.com/0102.html
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![]() 誕生花 椿(ツバキ) 花言葉 「控えめな素晴らしさ」、「気取らない優美さ」 1月2日の誕生花はツバキです。ツバキはツバキ科の常緑高木で、光沢のある濃い緑色の葉を持ち冬〜春にかけて美しい花を咲かせます。日本では古く〜親しまれてきた木で、日本を代表する美しい花です。 ![]() ![]() |
「椿の咲く約束」冬の終わり、冷たい風が吹きつける坂道を彩るように、紅い椿の花が静かに咲き誇っていた。その花の傍を、美佐はゆっくりと歩いた。 三年前の春、美佐と晶は大学の写真サークルで出会った。人前に出るのが苦手な美佐と、誰とでも気さくに話す明るい晶。初対面のとき、美佐は晶にカメラのシャッターを押してもらうようお願いされた。「椿が綺麗に咲いてるから一枚撮ってほしくてさ」。そういいながら、にこやかに椿の木の下に立った晶の無邪気な笑顔は、今でも記憶の奥で輝いている。 二人はすぐに打ち解けた。桜の花見、夏の海、秋の紅葉と、一緒に写真を撮りに出かける季節が続いた。 ある冬の日、二人は街のはずれの神社に出かけた。参道沿いの椿が満開を迎える頃だった。 その言葉を聞いたとき、美佐はふいに告白しそうになった。けれど、喉元まで出かかった想いは、結局寒さのせいにして飲み込んだ。 卒業を間近に控えたある日、突然、晶が留学すると告げた。 美佐は驚いたが、精一杯「頑張って」と笑った。本当は寂しさで胸がいっぱいだった。 晶が去った後、美佐の日々は空虚だった。晶のSNSから流れてくる異国の景色や新しい友人たちとの写真を、眩しさと切なさで見つめる毎日。 一方で椿だけは、毎年変わらずに花を咲かせていた。美佐は晶と撮った写真を胸に、お守りのように持ち歩いていた。 二年が経った春の終わり、美佐のもとに晶の訃報が届いた。 しばらくの間、美佐は何もできなかった。写真もカメラも椿の花も、見るのが苦しかった。 それでも、時間はわずかずつ美佐の心を溶かしていった。 説明文には、こんな言葉が記されていた。 「椿は、深い冬に咲く強さと美しさを持ちながら、儚くも散っていく。その一瞬を、愛する人と見届けられたなら、それだけで人生は幸せだ――そう信じて、僕はシャッターを切った。」 美佐の瞳から、静かに涙がこぼれた。 それから毎年、椿の花が咲くとき、美佐は神社を訪れた。 美佐と彼は椿の花を介して自然に会話が弾むようになり、カメラや風景の話、椿に込めた思いを少しずつ分かち合うようになった。青年は静かながらも優しい眼差しを持ち、どこか晶と似た雰囲気があった。 冬の終わり、二人は神社の椿の前で並んで写真を撮った。 それを聞いて美佐は、穏やかに微笑んだ。 「そうかもしれない。でも、きっと、みんなを励ますために咲いてるんだよ」 それは悲しみの記憶を抱えていた美佐が初めて心から口にした、新しい希望の言葉だった。 「来年も、この椿を一緒に見よう」 二人の影が椿の下できれいに重なった。春を前にして、やわらかな雪が舞い始めていた。 |
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1月2日の誕生花はツバキです。ツバキはツバキ科の常緑高木で、光沢のある濃い緑色の葉を持ち冬〜春にかけて美しい花を咲かせます。日本では古く〜親しまれてきた木で、日本を代表する美しい花です。