Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『プリムラの咲く頃に』 http://nspc.kojyuro.com/0125.html
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![]() 誕生花 プリムラ 花言葉 「青春の恋」、「青春の始まりと悲しみ」 1月25日の誕生花はプリムラです。プリムラはサクラソウ科の多年草で、北半球を中心に世界中に500種以上が分布している植物です。日本にも20種類近くが自生しており、和名はサクラソウと呼ばれています。品種により異なりますが、早春から初夏まで花を咲かせまだ寒い時期から可憐な花を咲かせます。 ![]() |
『プリムラの咲く頃に』春の風が街をやさしく撫でる三月の終わり、大学の中庭にある花壇には、今年もプリムラが咲き始めていた。赤、ピンク、黄色、紫…小さな花が寄り添うように咲き、まるで春のはじまりを祝福しているようだった。 文学部の四年生・紗季(さき)は、卒業式を目前に控えたある日、花壇の前で立ち止まった。 「…今年も咲いたんだ」 その花壇は、彼女にとって特別な場所だった。二年前の春、同じゼミの先輩・悠人(ゆうと)と初めて話したのが、プリムラの前だった。 「この花、プリムラって言うんだ。花言葉は“青春のはじまりと悲しみ”」 そう言って微笑んだ悠人の横顔が、今も忘れられない。 彼は卒業後、地方の出版社に就職し、東京を離れた。連絡は続いていたけれど、忙しさの中で次第に途切れてしまった。 それでも紗季は、毎年プリムラが咲く頃になると、この花壇に足を運んだ。あの日の会話を思い出しながら。 今年もまた、プリムラが咲いた。紗季は、花にそっと触れながらつぶやいた。 「…もうすぐ、私も卒業だね」 すると、背後から声がした。 「紗季?」 振り返ると、そこには懐かしい顔があった。 「…悠人さん?」 少し大人びた表情で、でも変わらぬ優しい目をした彼が、そこに立っていた。 「卒業、おめでとう。…どうしても、伝えたくて」 紗季は驚きと嬉しさで、言葉が出なかった。 「この花壇、覚えてる?…君と初めて話した場所」 「もちろん。…毎年、来てたんです。あなたに会える気がして」 悠人は、ポケットから小さな花束を取り出した。 「これ、プリムラ。…君に贈りたくて育てたんだ」 紗季は、胸がいっぱいになった。 「ありがとう。…すごく嬉しいです」 悠人は、少し照れながら言った。 「これからは、離れずに春を迎えたい。…紗季と一緒に」 紗季はうなずいた。 「はい。…プリムラのように、可憐に、でも強く」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。季節の花を眺めながら、未来の話をし、互いの夢を語り合った。 そして一年後の春。大学の花壇には、今年もプリムラが咲いていた。 「紗季、今年も咲いたね」 「うん。…変わらず、きれい」 悠人は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この花のように、君と新しい季節を迎えたい。…結婚してください」 紗季は、涙をこらえながら笑った。 「はい。…あなたとなら、運命を開いていける」 プリムラの花が、春の光の中でふわりと揺れ、二人の未来をやさしく祝福していた。 |
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1月25日の誕生花はプリムラです。プリムラはサクラソウ科の多年草で、北半球を中心に世界中に500種以上が分布している植物です。日本にも20種類近くが自生しており、和名はサクラソウと呼ばれています。品種により異なりますが、早春から初夏まで花を咲かせまだ寒い時期から可憐な花を咲かせます。