Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『モクレンの咲く丘で』 http://nspc.kojyuro.com/0108.html
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![]() 誕生花 モクレン 花言葉 「持続性」 1月8日の誕生花はモクレンです。モクレンは空に向かって美しい紫色の花を咲かせる春の花です。花の内側と外側の色が異なり、内側は白色ですが、内側は濃い紫色をしています。葉を隠してしまうほど大きな花を咲かせることが特徴で、暑さ寒さに強く、育てやすい植物です。 ![]() |
『モクレンの咲く丘で』春の風がまだ冷たさを残す三月の終わり、大学の裏手にある小さな丘には、今年もモクレンが咲き始めていた。白く大きな花が空に向かって咲き誇り、まるで静かに誇り高く生きる者たちを祝福しているようだった。 文学部の四年生・沙耶(さや)は、卒業式を目前に控えたある日、その丘に足を運んだ。 モクレンの花を見ると、決まって思い出す人がいた。 二年前の春、同じゼミにいた青年・直哉(なおや)。 彼は建築学科の学生で、静かにものを考える人だった。ゼミの合同研究で、文学と建築の関係を探るプロジェクトが組まれたとき、沙耶と直哉はペアになった。 初めての打ち合わせの日、直哉は丘のモクレンの前で言った。 「この花、モクレンって言うんだ。花言葉は“崇高”と“持続性”。…建築にも、文学にも通じる気がする」 「…どういう意味?」 「どちらも、時間を超えて残るものだから。…形は違っても、誰かの心に残る」 その言葉に、沙耶は心を動かされた。 それから、二人はモクレンの丘で何度も話し合いを重ねた。文学と建築、言葉と空間。異なる分野なのに、不思議と通じ合うものがあった。 プロジェクトが終わる頃、直哉は言った。 「卒業したら、地方の設計事務所に行く予定なんだ。…でも、モクレンが咲く頃には、またここに来るよ」 それから二年。沙耶は大学で学びながら、毎年モクレンの咲く丘に足を運んだ。あの日の会話を思い出しながら。 今年もまた、モクレンが咲いた。沙耶は、花にそっと触れながらつぶやいた。 「…もうすぐ、私も卒業だね」 すると、背後から声がした。 「沙耶?」 振り返ると、そこには懐かしい顔があった。 「…直哉さん?」 少し大人びた表情で、でも変わらぬ穏やかな目をした彼が、そこに立っていた。 「卒業、おめでとう。…どうしても、伝えたくて」 沙耶は驚きと嬉しさで、言葉が出なかった。 「この丘、覚えてる?…君と話した場所」 「もちろん。…毎年、来てたんです。あなたに会える気がして」 直哉は、ポケットから小さなスケッチブックを取り出した。 「これ、僕が描いたモクレンの丘。…君との記憶を残したくて」 沙耶は、ページをめくりながら涙をこらえた。 「…すごく、嬉しいです」 直哉は、そっと沙耶の手を握った。 「これからは、言葉と空間を一緒に育てていきたい。…沙耶と」 沙耶はうなずいた。 「はい。…モクレンのように、静かに、でも誇り高く」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。季節の花を眺めながら、未来の話をし、互いの夢を語り合った。 そして一年後の春。モクレンの丘には、今年も白い花が空に向かって咲いていた。 「沙耶、今年も咲いたね」 「うん。…あなたと一緒に見られてよかった」 直哉は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この花のように、君と未来を築きたい。…結婚してください」 沙耶は、涙をこらえながら笑った。 「はい。…あなたの空間が、私の言葉になる」 モクレンの花が、春の光の中で静かに揺れ、二人の未来をやさしく祝福していた。 |
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1月8日の誕生花はモクレンです。モクレンは空に向かって美しい紫色の花を咲かせる春の花です。花の内側と外側の色が異なり、内側は白色ですが、内側は濃い紫色をしています。葉を隠してしまうほど大きな花を咲かせることが特徴で、暑さ寒さに強く、育てやすい植物です。