Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『アンスリウムの赤』 http://nspc.kojyuro.com/0122.html
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![]() 誕生花 アンスリウム 花言葉 「情熱」、「印象に残る」 1月22日の誕生花はアンスリウムです。アンスリウムはサトイモ科の観葉植物です。熱帯アメリカから西インド初頭にかけて約600種類が分布し、花びらのように見えるものはホウです。長い期間楽しめる苞を観賞する鉢花として栽培される他、観葉植物として楽しまれる品種もあります。 ![]() |
『アンスリウムの赤』夏の気配が街に広がり始めた六月の午後、駅前のギャラリーカフェ「アトリエ・ルージュ」では、季節の植物をテーマにした展示が始まっていた。窓辺には、艶やかな赤いアンスリウムが並び、まるで心の奥に火を灯すような存在感を放っていた。 カフェで働く詩音(しおん)は、その花に特別な思いを抱いていた。 大学時代、デザイン科の展示会で出会った青年・律(りつ)が、初めて彼女に贈ってくれた花がアンスリウムだった。 「この花、君に似てると思った。強くて、でも繊細で、印象に残る」 その言葉に、詩音は胸が高鳴った。律は無口で、作品にすべてを込めるような人だった。彼の描く色彩は大胆で、でもどこか優しさがあった。 展示会の準備を通して、二人は少しずつ距離を縮めていった。詩音は詩を、律は絵を。互いの作品が並ぶと、まるで会話をしているようだった。 けれど、卒業後、律は地方の美術館に就職することになった。 「離れても、作品でつながっていたい。…いつか、また一緒に展示しよう」 そう言って、彼はアンスリウムの鉢植えを手渡してくれた。 「花言葉は“情熱”。…君の詩に、ずっと宿ってると思う」 詩音は、その言葉を胸に刻み、彼を見送った。 それから数年。詩音はカフェで働きながら、詩を書き続けた。窓辺には、毎年アンスリウムを飾り、律との約束を思い出していた。 ある夏の日。カフェに一人の男性が現れた。 「…アンスリウム、まだ飾ってるんだね」 その声に、詩音は振り返った。 「…律さん?」 そこには、少し日焼けした顔に穏やかな笑みを浮かべた律が立っていた。 「帰ってきました。…君の詩に、また触れたくて」 詩音は、胸がいっぱいになった。 「ずっと、待ってたよ。…この花と一緒に」 律は、ポートフォリオを差し出した。 「これ、僕の新作。…君の詩と並べたくて描いた」 詩音はページをめくりながら、涙をこらえた。 「私も、書いてた。…あなたと並べる日を夢見て」 それから二人は、共同展示会の準備を始めた。作品を並べ、空間を彩り、アンスリウムを中心に据えた。 展示会の初日。ギャラリーには、夏の光と花の香りが満ちていた。 「詩音、これからも一緒に作品を作っていきたい。…詩も、未来も」 律の言葉に、詩音は笑顔でうなずいた。 「はい。…あなたとなら、情熱をずっと咲かせられる」 アンスリウムの赤が、夏の風に揺れ、二人の未来を鮮やかに照らしていた。 |
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1月22日の誕生花はアンスリウムです。アンスリウムはサトイモ科の観葉植物です。熱帯アメリカから西インド初頭にかけて約600種類が分布し、花びらのように見えるものはホウです。長い期間楽しめる苞を観賞する鉢花として栽培される他、観葉植物として楽しまれる品種もあります。