Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『シクラメンの窓辺』 http://nspc.kojyuro.com/0114.html
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![]() 誕生花 シクラメン 花言葉 「気おくれ」、「遠慮」 1月14日の誕生花はシクラメンです。シクラメンはサクラソウ科の多年草で、11月から花壇や寄せ植えで活躍するミニシク面から、お歳暮やクリスマスに使われる豪華な鉢植えまで、さまざまな種類があります。日本では冬の花の印象が強いですが、本来の開花のピークは1月〜4月までです。年が明けて花数が増えるととても美しい姿になります。 ![]() |
『シクラメンの窓辺』冬の風が街を冷たく吹き抜ける頃、駅前の雑貨と植物を扱う店「ミモザ堂」の窓辺には、赤や白、ピンクのシクラメンが並んでいた。寒さの中でも凛と咲くその花は、通りすがりの人々の目を引いていた。 店で働く紬(つむぎ)は、シクラメンの季節になると、決まってある記憶がよみがえる。 大学時代、図書館でよく顔を合わせていた青年・律(りつ)のことだった。 彼は静かで、いつも本を読んでいた。紬もまた、話すのが得意ではなく、ただ隣に座って静かに過ごす時間が心地よかった。 ある冬の日、律がふと話しかけてきた。 「…窓辺に咲いてた花、シクラメンっていうんですよね?」 紬は驚きながらも、うなずいた。 「はい。寒い時期に咲くんです。…花言葉は“遠慮”とか“はにかみ”とか」 律は少し笑った。 「僕たちに、ぴったりですね」 それから、二人は少しずつ言葉を交わすようになった。図書館の窓辺に咲くシクラメンを眺めながら、好きな本の話、将来の夢、静かな日々のこと。 卒業が近づいたある日、律は言った。 「僕、地元に戻って家業を継ぐことになりました。…でも、紬さんと過ごした時間、ずっと忘れないと思います」 紬は、胸が締めつけられるような思いでうなずいた。 「私も…律さんと話す時間が好きでした。シクラメンを見るたびに、思い出すと思います」 律は、ポケットから小さな紙袋を取り出した。 「これ、シクラメンの鉢です。…育てるの、得意ですか?」 紬は笑って受け取った。 「がんばってみます。…来年も咲いたら、報告しますね」 それから数年。紬は「ミモザ堂」で働きながら、律からもらったシクラメンを毎年育て続けた。冬になると、窓辺にその花を飾り、静かに律のことを思い出していた。 ある年の冬。店の前で、シクラメンの鉢を見つめる一人の男性がいた。 「…紬さん?」 振り返ると、そこには律が立っていた。少し大人びた表情で、でも変わらぬ優しい目をしていた。 「律さん…!」 「来てしまいました。…あの時のシクラメン、まだ咲いてますか?」 紬は、店の窓辺を指さした。 「はい。毎年、ちゃんと咲いてくれます」 律は、少し照れたように笑った。 「僕も、毎年思い出してました。あの窓辺の時間。…でも、やっぱり会いたくなって」 紬は、胸がいっぱいになった。 「私も、ずっと待ってました。シクラメンが咲くたびに、また会えたらって」 律は、そっと紬の手を握った。 「これからは、毎年じゃなくてもいい。ずっと一緒に、冬を迎えたい」 紬はうなずいた。 「はい。シクラメンみたいに、静かに、でも確かに咲く気持ちを、大切にしたいです」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。店の手伝いをしたり、休日に植物園へ行ったり。紬の世界に、律の存在が自然に溶け込んでいった。 そして一年後の冬。「ミモザ堂」の窓辺には、今年もシクラメンが並んでいた。 「紬さん、今年もこの花をください」 「もちろん。…花言葉は?」 律は微笑んだ。 「“絆”と“変わらぬ愛”。…今年は、あなたに」 紬は、シクラメンの鉢を手渡しながら言った。 「じゃあ、今年はそれで。…ずっと、咲かせていこうね」 シクラメンの花が、冬の光の中で静かに揺れ、二人の未来をやさしく照らしていた。 |
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1月14日の誕生花はシクラメンです。シクラメンはサクラソウ科の多年草で、11月から花壇や寄せ植えで活躍するミニシク面から、お歳暮やクリスマスに使われる豪華な鉢植えまで、さまざまな種類があります。日本では冬の花の印象が強いですが、本来の開花のピークは1月〜4月までです。年が明けて花数が増えるととても美しい姿になります。