Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『ローズマリーの記憶』 http://nspc.kojyuro.com/0121.html
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![]() 誕生花 ローズマリー 花言葉 「思い出」、「追憶」 1月21日の誕生花はローズマリーです。ローズマリーは、地中海沿岸地方が原産の常緑性低木です。食用から化粧品まで幅広く利用され、清々しい香りがすることが特徴のハーブです。煮込み料理からグリルまで、色々な料理に使われています。とても丈夫で、乾燥した痩せ地でも育つため、育てやすいハーブです。 ![]() |
『ローズマリーの記憶』春の風がやさしく吹き抜ける午後、丘の上にある小さなハーブ園では、ローズマリーが青紫の花を咲かせていた。すっと伸びた細い葉と、爽やかで少し切ない香りが、訪れる人々の記憶をそっと呼び起こす。 園芸スタッフとして働く七海(ななみ)は、その香りに包まれながら、ふと昔のことを思い出していた。 大学時代、ハーブ研究ゼミで出会った青年・悠真(ゆうま)のこと。 彼は植物の香りに敏感で、ローズマリーの香りを嗅ぐと、必ずこう言った。 「記憶って、香りに宿るんだよ。ローズマリーは、忘れたくない人の香りだと思う」 七海は、その言葉が好きだった。静かで、でも心に残るような響きがあった。 二人はゼミで一緒に研究を重ね、ハーブ園の実習にも参加した。ローズマリーの剪定をしながら、未来の話をしたり、好きな本の話をしたり。穏やかな時間が流れていた。 けれど、卒業を前に、悠真は海外の研究機関に進むことになった。 「七海と過ごした時間、忘れないよ。…ローズマリーの香りがある限り、思い出せるから」 そう言って、彼は小さな鉢植えを手渡してくれた。 「これ、僕が育てたローズマリー。…君の記憶に、残ってくれたら嬉しい」 七海は、涙をこらえながら笑った。 「ありがとう。…私も、忘れない」 それから数年。七海はハーブ園で働きながら、悠真からもらったローズマリーを育て続けた。毎年春になると、その香りが彼との時間をよみがえらせてくれた。 ある春の日。ハーブ園に一人の男性が現れた。 「…ローズマリー、まだ育ててるんですね」 その声に、七海は振り返った。 「…悠真さん?」 そこには、少し日焼けした顔に穏やかな笑みを浮かべた悠真が立っていた。 「帰ってきました。…君の記憶に、残っていたくて」 七海は、胸がいっぱいになった。 「ずっと、育ててたよ。…あなたのローズマリー」 悠真は、ポケットから小さな瓶を取り出した。 「これ、僕が研究して作ったローズマリーの香水。…君に贈りたくて」 七海は、そっと瓶を受け取った。ふたを開けると、懐かしい香りが広がった。 「…変わらない香り。変わらない気持ち」 悠真は、七海の手をそっと握った。 「これからは、記憶じゃなくて、今を一緒に育てていきたい」 七海はうなずいた。 「うん。…ローズマリーの香りと一緒に」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。ハーブ園で一緒に働きながら、季節の移ろいを感じ、未来を語り合った。 そして一年後の春。ローズマリーは、今年も青紫の花を咲かせていた。 「七海、今年も咲いたね」 「うん。…変わらず、きれい」 悠真は、ポケットから小さな箱を取り出した。 「この香りと一緒に、ずっと君といたい。…結婚してください」 七海は、涙をこらえながら笑った。 「はい。…あなたの香りが、私の記憶になる」 ローズマリーの香りが、春の光の中で静かに揺れ、二人の未来をやさしく包んでいた。 |
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1月21日の誕生花はローズマリーです。ローズマリーは、地中海沿岸地方が原産の常緑性低木です。食用から化粧品まで幅広く利用され、清々しい香りがすることが特徴のハーブです。煮込み料理からグリルまで、色々な料理に使われています。とても丈夫で、乾燥した痩せ地でも育つため、育てやすいハーブです。