Tweet 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 「雪のカーネーション」 https://nspc.kojyuro.com/0100.html
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1月の誕生花|カーネーション ![]() ![]() |
「雪のカーネーション」 白い息が空に溶けていく。冷たい風が頬を刺すように吹き抜け、凍えた指先がかじかんで動かない。 店先に並んだ花の中で、ひときわ僕の目を引いたのは、赤いカーネーションの束だった。 店に入ると、鼻先にやわらかい香りが広がる。 「……遥(はるか)?」 僕は一瞬、言葉をなくした。大学を卒業してから彼女とは連絡を取っていなかった。彼女は地元の花屋を継ぐと言っていたが、まさかここで会うとは。 「たまたま通りかかったんだ」 かつて僕と遥は、大学時代のサークルで出会った。僕が写真、彼女が植物。「花を撮る写真家になりたい」と言った僕に、「それならモデルになる花は私が見つけるよ」と彼女はいつも笑っていた。 だが、卒業後の進路で僕たちは離れた。僕は東京で雑誌社に就職し、彼女は故郷へ戻る道を選んだ。 「懐かしいね」と彼女が優しく笑う。 店内の奥には、白と赤の花が丁寧に束ねられた花束がずらりと並んでいる。正月のアレンジメントらしい。 彼女が花に向き合う横顔を見て、胸に再び淡い熱がこみ上げる。 「まだ写真、続けてるの?」 翌週、撮影のために再び店を訪れた。ガラス窓の外には雪がちらちらと舞っている。 ふと、彼女が言った。 撮影が終わるころ、彼女が店の奥から小さな包みを持ってきた。 夜、東京のアパートに戻ってからも、手にした包みの温もりが消えなかった。 春になったら――また会えるだろうか。 翌月、雑誌の特集が完成した。「冬を彩る花たち」と題されたその巻頭には、フローリスト・陽だまりのカーネーションの写真が載った。 “花は心に咲くものだから” 掲載号を送ると、数日後、遥から手紙が届いた。達筆な文字でこう綴られていた。 ――花を見て、心が少しでも温まるなら、それが私の喜びです。今度は、あなたに渡したい花があるの。1月のカーネーション。待ってます。 その翌週、再び雪が降った。 遥は微笑みながら差し出した。 その言葉に、僕は何も言えず頷いた。 冬の終わりは、もうそこまで来ている。 この作品の雰囲気は、「静かな再会」と「花を通した愛の再生」をテーマにしています。 |
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1月の誕生花|カーネーション
1月の誕生花はカーネーションです。カーネーションは「母の日」に贈る花のイメージがありますが、世界中で古くから親しまれ、神々に捧げられてきた花であるため、1月の誕生花とされています。カーネーションの開花は5月〜6月ですが、現在ではほとんどが温室で栽培されているので、年中出回っています。