Tweet 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 「雪のカーネーション」  https://nspc.kojyuro.com/0100.html
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1月の誕生花|カーネーション
【生花】国産カーネーション ジュリア(ピンク) 5-60cm程度 藤花園【FJ】 - 花材通販はなどんやアソシエ
誕生花 カーネーション 
花言葉 「無垢で深い愛」

1月の誕生花はカーネーションです。カーネーションは「母の日」に贈る花のイメージがありますが、世界中で古くから親しまれ、神々に捧げられてきた花であるため、1月の誕生花とされています。カーネーションの開花は5月〜6月ですが、現在ではほとんどが温室で栽培されているので、年中出回っています。


【寄せ植え】ピンクの花には秘密の効果!? カーネーションの寄せ植え | GardenStory (ガーデンストーリー)

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「雪のカーネーション」

 白い息が空に溶けていく。冷たい風が頬を刺すように吹き抜け、凍えた指先がかじかんで動かない。
 新年最初の日曜日、駅前の花屋「フローリスト・陽だまり」は、ガラス越しに鮮やかな色がぎっしり詰まっていた。冬の灰色の世界に、そこだけが春のような温かさを持っている。

 店先に並んだ花の中で、ひときわ僕の目を引いたのは、赤いカーネーションの束だった。
 まだ学生だったころ、彼女がよく話していた。「お母さんの誕生日には、赤いカーネーションを贈るの」と。あのとき笑顔で語る彼女の横顔が、今でも脳裏に浮かぶ。

 店に入ると、鼻先にやわらかい香りが広がる。
 カウンターの奥、エプロン姿の女性が振り向いた。
 「いらっしゃいませ。寒いですね」
 その声を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
 五年ぶりに見る顔だった。

 「……遥(はるか)?」
 彼女も驚いたように目を見開いたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
 「本当に久しぶりね、浩一(こういち)。元気にしてた?」

 僕は一瞬、言葉をなくした。大学を卒業してから彼女とは連絡を取っていなかった。彼女は地元の花屋を継ぐと言っていたが、まさかここで会うとは。

 「たまたま通りかかったんだ」
 僕がそう言うと、遥は小さくうなずいて、「ちょっと待ってて」と奥に引っ込んだ。戻ってきたとき、彼女の手には一輪のピンクのカーネーションがあった。
 「新年のサービス花。幸運を呼ぶんだって」
 彼女が笑って差し出したその花を受け取ると、不意に胸の奥が熱くなった。

 かつて僕と遥は、大学時代のサークルで出会った。僕が写真、彼女が植物。「花を撮る写真家になりたい」と言った僕に、「それならモデルになる花は私が見つけるよ」と彼女はいつも笑っていた。
 いつしか二人で出かけることが多くなり、恋人同士になったのは二十歳の冬。街に雪が降り始めた夜だった。

 だが、卒業後の進路で僕たちは離れた。僕は東京で雑誌社に就職し、彼女は故郷へ戻る道を選んだ。
 「約束する、また春になったら会いに行くよ」
 そう言い残した僕は、忙しさに流され、その約束を果たせなかった。

 「懐かしいね」と彼女が優しく笑う。
 「覚えてる? 卒業写真、桜じゃなくてカーネーション撮りたいって言ったこと」
 「ああ、忘れるわけないよ。あの時、花が咲いている場所を探して夜通し歩いた」
 「見つからなかったけどね」
 二人で笑い合うと、時間がゆっくり戻っていくようだった。

 店内の奥には、白と赤の花が丁寧に束ねられた花束がずらりと並んでいる。正月のアレンジメントらしい。
 彼女はてきぱきと花を扱いながら言った。
 「年明けはお祝い事が多いから、カーネーションがよく出るの。赤は感謝、ピンクは愛情、白は純粋って、それぞれ意味があるんだよ」
 「そういうの、今も覚えてるんだな」
 「当たり前よ。花に込められた言葉を伝えるのが、私の仕事だもの」

 彼女が花に向き合う横顔を見て、胸に再び淡い熱がこみ上げる。
 変わらない声。凛とした姿勢。その人柄すべてが、五年前と同じだった。

 「まだ写真、続けてるの?」
 「うん。東京の雑誌で植物の特集を担当してる。今度、冬の花をテーマにした特集を組むことになってね。カーネーションもその一つなんだ」
 「へえ、素敵。もしよかったら、ここの花を撮ってくれる?」
 彼女の声に、僕の心が揺れた。
 「……いいのか?」
 「もちろん。花たちも、あなたに撮ってもらえたら喜ぶと思うから」

 翌週、撮影のために再び店を訪れた。ガラス窓の外には雪がちらちらと舞っている。
 撮影を始めると、遥は花一輪一輪を大切に並べ、僕の横でそっと距離を保った。
 カメラのレンズ越しに彼女が映り込む。光の中で、赤いカーネーションが息づくように輝いていた。

 ふと、彼女が言った。
 「昔ね、浩一の撮る写真が好きだった。光が人を包むみたいで。だから、また見たかったの」
 「俺も、またお前を撮りたかったよ。花を扱う姿を」
 しばし、静寂が降りた。外の雪がガラスに当たって音もなく溶けていく。

 撮影が終わるころ、彼女が店の奥から小さな包みを持ってきた。
 「これはお礼。カーネーションの球根。春になれば咲くよ」
 「ありがとう。でも、育てるの下手なんだよな」
 「大丈夫。花はね、世話する人の心に咲くものだから」
 彼女のその言葉に、胸が締めつけられた。

 夜、東京のアパートに戻ってからも、手にした包みの温もりが消えなかった。
 仕事に追われる日々の中で、彼女との再会は、心の冬を解かすような出来事だった。

 春になったら――また会えるだろうか。
 そう思いながら窓の外を見ると、都会の片隅にも小さな雪が舞っている。
 その白の中に、赤い花の幻がゆらめいた。

 翌月、雑誌の特集が完成した。「冬を彩る花たち」と題されたその巻頭には、フローリスト・陽だまりのカーネーションの写真が載った。
 誌面に添えた一文は、僕が彼女の言葉を引用したものだった。

 “花は心に咲くものだから”

 掲載号を送ると、数日後、遥から手紙が届いた。達筆な文字でこう綴られていた。

 ――花を見て、心が少しでも温まるなら、それが私の喜びです。今度は、あなたに渡したい花があるの。1月のカーネーション。待ってます。

 その翌週、再び雪が降った。
 僕はカメラを背負い、あの花屋へ向かった。ガラスの向こうで、赤いカーネーションが壁一面に咲いている。
 扉を開けると、花の香りが胸いっぱいに広がった。

 遥は微笑みながら差し出した。
 それは一輪の赤いカーネーションだった。
 「おかえり」

 その言葉に、僕は何も言えず頷いた。
 どこかで鈍い鐘の音が鳴る。外の雪が光の粒になって舞い落ちていた。
 僕たちはただ、花の香りに包まれながら、静かに見つめ合った。

 冬の終わりは、もうそこまで来ている。
 そして、カーネーションの赤が、まだ冷たい季節に確かな温もりを灯していた。


この作品の雰囲気は、「静かな再会」と「花を通した愛の再生」をテーマにしています。
もう少し劇的な展開(失恋、告白、別れなど)を取り入れたバージョンにしてみましょうか?

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1月の誕生花|カーネーション

カーネーション 赤い花

Photo by しまちゃんさん@GreenSnap

誕生花
カーネーション
花言葉
「無垢で深い愛」

1月の誕生花はカーネーションです。カーネーションは「母の日」に贈る花のイメージがありますが、世界中で古くから親しまれ、神々に捧げられてきた花であるため、1月の誕生花とされています。カーネーションの開花は5月〜6月ですが、現在ではほとんどが温室で栽培されているので、年中出回っています。