Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『スミレの手紙』 http://nspc.kojyuro.com/0109.html
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![]() 誕生花 スミレ 花言葉 「謙虚」 1月9日の誕生花はスミレです。スミレは、スミレ科の多年草です。野山はもちろん、公園や歩道の脇など、人間が生活に身近な場所でもよく見かける小さく可愛らしい花です。可憐な見た目とは異なり、とても強靭な植物です。 ![]() |
『スミレの手紙』春のはじまり、まだ風に冷たさが残る頃。高校の裏庭に、毎年ひっそりと咲くスミレの花がある。誰も気づかないような場所に、紫の小さな花が顔を出す。 その花を見つけたのは、文芸部に所属する高校二年の結(ゆい)だった。 「こんなところに…」 彼女はスケッチブックを開き、スミレの花を描き始めた。控えめで、でも凛とした姿に惹かれたのだ。 その日、同じく文芸部の先輩・颯太(そうた)が部室にやってきた。 「結、また花の絵描いてるの?」 「はい。裏庭にスミレが咲いてて…」 颯太は少し驚いたように笑った。 「スミレって、“控えめな愛”って花言葉があるんだよ。結にぴったりかも」 その言葉に、結は顔を赤らめた。颯太は、部誌の編集を担当する真面目な先輩で、結が密かに憧れている人だった。 それから、結は毎日スミレの絵を描き続けた。花の色、葉の形、風に揺れる姿。描くたびに、颯太への想いも少しずつ深まっていった。 ある日、部誌の企画で「春の詩」を募集することになった。結は、スミレの花をテーマにした詩を書いた。
その詩を読んだ颯太は、しばらく黙っていた。そして、静かに言った。 「…この詩、誰かに向けて書いたの?」 結はうつむいたまま、うなずいた。 「…好きな人がいて。でも、言えなくて」 颯太は少し笑って、結の頭をそっと撫でた。 「その人、きっと気づいてるよ。こんなに優しい詩、届かないはずがない」 結は、胸がいっぱいになった。言葉にできない想いが、スミレの花のように静かに咲いていた。 卒業式の日。颯太は、部室に結を呼び出した。 「これ、君に渡したくて」 彼が差し出したのは、一冊の小さな詩集だった。表紙には、結が描いたスミレの絵が使われていた。 「部誌の最後に、君の詩を載せたかった。でも、それだけじゃ足りない気がして。だから、個人で作ったんだ。…僕の気持ちも、詩に込めてある」 結はページをめくった。そこには、颯太が書いた詩が並んでいた。
結は、涙がこぼれそうになるのをこらえながら、笑った。 「…ありがとう。私も、ずっと好きでした」 颯太は、結の手をそっと握った。 「これからも、詩を書いていこう。二人で」 春の風が吹き、裏庭のスミレが静かに揺れていた。控えめな花が、確かな愛を咲かせた瞬間だった。 |
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1月9日の誕生花はスミレです。スミレは、スミレ科の多年草です。野山はもちろん、公園や歩道の脇など、人間が生活に身近な場所でもよく見かける小さく可愛らしい花です。可憐な見た目とは異なり、とても強靭な植物です。