Tweet 短編小説 誕生日の花をテーマに短篇小説を作成 『デンドロビウムの約束』 http://nspc.kojyuro.com/0116.html
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![]() 誕生花 デンドロビウム 花言葉 「華やかな魅力」、「わがままな美人」 1月16日の誕生花はデンドロビウムです。デンドロビウムはラン科の多年草で、熱帯から温帯にかけて約1600種類ほどが自生しています。日本でもセッコクが自生しています。丈夫で育てやすいのが特徴で、たくさんの花を咲かせるため開花した姿はとても豪華で見応えがあります。 ![]() |
『デンドロビウムの約束』春の終わり、街の花屋「花灯(はなあかり)」には、色とりどりの蘭が並び始めていた。中でも、ひときわ目を引くのが、白と紫のグラデーションが美しいデンドロビウムだった。 花屋で働く美月(みづき)は、その花に特別な思いを抱いていた。 大学時代、園芸サークルで出会った青年・遥人(はると)が、初めて彼女に贈ってくれた花がデンドロビウムだったからだ。 「この花、君に似てると思って。華やかだけど、芯が強くて」 その言葉に、美月は照れながらも嬉しくて、ずっとその花を育て続けていた。 遥人は植物研究を志していて、卒業後は海外の研究機関へと旅立った。遠距離の恋は続いたが、次第に連絡は減り、やがて自然と途切れてしまった。 それでも、美月は毎年デンドロビウムを育て続けた。花が咲くたびに、彼の言葉を思い出しながら。 ある春の日。花屋に一人の男性が現れた。 「…デンドロビウム、まだありますか?」 その声に、美月は振り返った。 「…遥人さん?」 そこには、少し日焼けした顔に穏やかな笑みを浮かべた遥人が立っていた。 「久しぶり。…君の花屋、ずっと来たかったんだ」 美月は言葉が出なかった。ただ、胸が高鳴っていた。 「どうして…?」 「研究が一段落して、帰国したんだ。…それで、どうしても伝えたくて」 遥人は、ポケットから小さな鉢植えを取り出した。 「これ、君に。僕が育てたデンドロビウム。…君の花に、僕の想いを重ねたくて」 美月は、涙がこぼれそうになるのをこらえながら、笑った。 「私も、ずっと育ててた。あなたがくれた花を。…毎年、咲かせてたよ」 遥人は、そっと美月の手を握った。 「これからは、離れずに育てていこう。君と、花と、未来を」 美月はうなずいた。 「はい。…一緒に咲かせていこうね」 それから二人は、少しずつ距離を縮めていった。花屋の手伝いをしたり、蘭の展示会へ出かけたり。美月の世界に、遥人の存在が自然に溶け込んでいった。 そして一年後の春。「花灯」には、今年もデンドロビウムが並んでいた。 「美月さん、今年もこの花をください」 「もちろん。…花言葉は?」 遥人は微笑んだ。 「“純粋な愛”と“華やかな魅力”。…今年は、君に贈るために」 美月は、デンドロビウムの鉢を手渡しながら言った。 「じゃあ、今年はそれで。…ずっと、咲かせていこうね」 デンドロビウムの花が、春の光の中で静かに揺れ、二人の未来をやさしく照らしていた。 |
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1月16日の誕生花はデンドロビウムです。デンドロビウムはラン科の多年草で、熱帯から温帯にかけて約1600種類ほどが自生しています。日本でもセッコクが自生しています。丈夫で育てやすいのが特徴で、たくさんの花を咲かせるため開花した姿はとても豪華で見応えがあります。